十年前の住まい探し16

oshikun2010-02-22

 マンション「鷺宮B」再訪
 さて、そんなこんなでマンション探しの本史に戻ることにする。しかしツラツラ書いてみると、前史もそれなりに本史への「原始的蓄積」となっていたような気がする。特にバブルの余韻が残っていた時期と、私がマンション探しを本格化しだした時期との価格差や造りこみの違いがよくわかったのは収穫だった。そういったことへの感覚は、たぶん本史で多いに役立っている。
 マンション「鷺宮B」を見てから2週間後、あの営業マンの八嶋智人似から電話があった。最上階のでかいバルコニー&窓付き風呂の物件の内装が出来上がったので、見に来てほしいという。今度は駅からクルマではなく、徒歩でいってみることにした。一応私も本気なのである。
 時間は午後の早い時間。前回来たときは段ボールやベニヤ板などで保護されていたエントランスも「堂々完成」していて、またまた居並ぶ営業マン(客の数に比して多すぎる。かなり労働効率が悪い)の林の中から、八嶋智人似を探し出して案内をお願いする。低層マンションといっても最上階は眺めがいい。前回は夕方だったので、その雰囲気はまただいぶ違っている。もちろん壁紙がキレイに貼られ、散らばっていたゴミも片づけられている。
 しかし、なんというのか、つまらないのである。広いバルコニーも快適そうだし、窓付きの風呂も使うと気分が良さそうではある。でも「いいなぁ、ここに住みたいなぁ」という気持ちが沸き上がってこないのだ。で、そういった気分で見ているといろいろな箇所のアラが目立ってくる。やはり玄関近くの部屋は暗いし、壁紙の継ぎ目がきれいではないし、小さな戸棚の立て付けが良くないし、といったことが、口には出ないが、また顔に出てしまう。
 「なるほど、なるほど」などといっている客は、「だめだね、だめだね」といっているようなもの。物件を気に入った客はドアを開けた瞬間に「うぁわ、すてき」なんていってしまうものなのだ。
 これが4000万円台なら、少しは「うぁ」ともいったかもしれないが、如何せん、5000万円台も後半も後半なのである。やっぱり「現物モデルルーム方式」(当方命名)による価格上乗せのせいなのか、値頃感がイマイチだなぁ、などと偉そうに思っていると、「とりあえず下の部屋で……」と八嶋智人似がいうのである。彼も当方の気分を察しているらしい。モデルルームになっている1階の部屋に降りる。ここでは彼の上司あたるベテラン営業マン「営業部長氏」が待ち構えていた。なんと彼の周囲1メートルには、まだまだバブルの臭気が漂っている。それがドアを開けた瞬間、ツンと臭った。