ほしいのはキンかドウ

oshikun2010-03-16

 昨日、池袋を歩いていると、とある店のシャッターにはたくさんの貼り紙があった。
 店の名前はキンカ堂。昨月に自己破産した会社だ。何が書いてあるのかと近づくと、そのほとんどが、キンカ堂への感謝と激励の言葉だった。
 この池袋のお店は洋裁の素材などを扱っていたようで、そのお客さんと店員との日々のことが綴られている。最近まで利用させてもらったという高校の裁縫部、何十年か前に上京してからずっと自分の服は自分で作っていて、そのすべてでキンカ堂にお世話になったという高齢の方、一本のジッパーを買うことで新しい服を買わず、以来繕って着る習慣なった人、丁寧な対応がいつまでも忘れられないという思い出などがその一枚一枚に書かれている。「銀メダルなんかいらない。ほしいのはキンかドウ」というはなかなかの名文だ。
 そしてその中の一枚に、今度は従業員一同と名前で、それらへの感謝の言葉があった。
 会社の突然の自己破産は、経済的にも精神的にも辛いことで、その心情を理解できるはずもないのだけれど、これだけ多くのお客さんからの気持ちが届けられていることは、彼らの仕事が、すばらしかったことの証しに違いない。