十年前の住まい探し26

oshikun2010-03-28

 デメリットを有効活用
 マンションを供給する側にも、いろいろと都合がある。敷地面積の大きさだとか、その土地の法的な制限や、パチンコ屋や公園の有無といった周辺環境のデメリットやメリットなどなど、いろいろな都合を彼らはまるで食材のようにキッチンに並べ、いったいどんな料理に仕上げたら客は満足するのだろうか、と考えるのだ。その際最初に頭に浮かぶのが、どのような料理、いや物件が一番効率的なのかということである。効率的というのは、もちろん、買い手ではなく売り手としての効率である。物件の向き、高さ、間取りなどをどう塩梅するかが、その供給側の腕の見せ所となる。
 そしてその結果として、問題のあまりない土地には、えてしてタンスのようなマンションが建てられる。最初に見てきたマンション「鷺宮A」や「鷺宮B」がそれである。また周辺の事情により、個性的なものに打って出ることもある。例えばマンション「中野A」のように、である。
 そういったことから考えるとマンション「浮間舟渡B」は、今まで見てきた物件とはかなり異なった考え方に基づいていることがわかってきた。
 というのも、もともとタワー型のマンションは購入の検討外であったのだ。だからタワーマンションの利点や弱点などはまったく見てこなかったのである。高額物件であるという思い込みや、佃島などの埋め立て地に林立するそれらを見て、地震時の液状化現象への不安もあった。
 だから、あくまでもたまたま「浮間舟渡A」のモデルルームの帰り道にあったから、この「浮間舟渡B」のモデルルームに寄ったのだ。もしそれが駅の向こう側にあったら、たぶん寄ることはなかっただろう。
 しかしこの「浮間舟渡B」のモデルルームを見たことで、マンションに対する考え方が大きく変わることになる。いやそうではなく自分のマンションに対する認識の浅さが明らかになったということなのかもしれない。
 今までは田の字型・ようかん型のマンションを見てきて、興味を示したのは、「鷺宮A」の中の見分不相応な高級物件とか、「鷺宮B」の最上階の窓付き風呂と広大バルコニー物件、あるいは「中野A」の創意工夫満載物件、などであった。しかしそれら、特に最初のふたつは建物全体の中のちょっとしたオマケで出来た住居であって、物件としてのコンセプトではない。唯一、全体のコンセプトが「田の字・ようかん」でなかったのが、マンション「東中野A」だが、立地条件の悪さと価格の高さが自分の関心度を醸成させることはなかった。
 そういったことからいうと、マンション「浮間舟渡B」は「田の字・ようかん」でもなく、全室南向きでもない。しかも「東中野A」のように思いっきり創意工夫を凝らしているのではなく、極めてシンプルにコンセプトをまとめているといえるのだ。そのコンセプトとはタワー型ゆえに各フロアの面積が比較的狭いという必然的に発生するデメリットを、逆転の発想で造られたモノといってもいいのかもしれない。ではその「逆転」されたモノとは、いったい何なのだろうか。