避難所で読書

 今年の「暑くもなく、寒くもなく」という日は、意外にも天候不順のせいか多いような気がする。そんな日はウチの狭小ベランダに出て読書を楽しみたい。ここは地上の喧騒が微かに聞こえてくるが、逆に部屋の中の「喧騒」からは離れることができる。いわば私の「避難所」なのである。
 しかしこの場所を気持ちよく味わえる日数は、それでも少ない。
 さて、椅子の上の文庫本は小林信彦さんの『小説世界のロビンソン』である。小林さんの作品は十冊以上読んでいるけれど、失礼ながら、これほど氏が博識な方だったとは知らなかった。それも自身の読書体験に基づいることに驚くばかりである。また読書という経験が、ある意味で事件や出来事の体験と同じように、時代性を持っていることに気づかされるのだ。
 といいつつ、私はまだこの本を3分の1強しか読んでいない。
 願わくば、ベランダ読書の日々の多からんことを。