今夜はキーボード三枚、じゃなくて三昧。

 またまたキーボード系を三枚ほどご紹介します。と書いて思ったのだけど、このアルバムを一枚二枚って数えることもなくなる時代に入っているのかなぁ、なんて。
 閑話休題、またまた超有名盤が二枚の、ややマニアックが一枚です。ご賞味アレ。
★THE SCENE CHANGES BUD POWELL
 今のジャズピアニストは好むと好まざるとに関わらず、エバンス派とパウエル派に分けられてしまうって話を聞いたことがあります。まあ聞いたのがかなり昔なんで今ではそんなこともないかもしれませんが、エバンスとの公平を期すためにも、バド・バウエルも一作。
 エバンスがベースやドラムスとの掛け合いというかインタープレイのお手本なのに比べると、こちらは「ピアノだけでどんどんいっちゃうもんね」とばかりに、ずんずんと勝手に先に進んでしまいます。エバンスよりも1.5倍強く、2倍速く弾く。いやあくまでもそれはイメージですが。しかも一音一音に別の音がズレて重なり、ぼやけてくる。そしてそれが絶妙な響きとなる。でもこれはデートのときのBGMには不向き。あはは、もうデートなんていうことばもかなり古い感覚ですね。はい書いててそう思います。
 で、どんな場所と時間と機会にマッチするかというと、もちろんひとりの男(年齢問わず)のひとりの部屋(広さ問わず)で、ちょっとおいしい肴が手元にあるとき、バーボンのボトルを眺めながら(スコッチではないでしょ。まして日本酒系は不可)聴くべき音楽です。
★MAIDEN VOYAGE HERBIE HANCOCK
 ハービー・ハンコックは、ピアニストというよりもコンポーザーの才に恵まれた人といった方がいいでしょう。そしてその頭には当然、革新的という文字が付きます。事実、ピアニストでありながら、その定番であり、かつピアノの音が前面で出るトリオの作品は僅かしかありません(たぶん)。
 ソロの作品も、少なくともデビュー後何年かはないはずです。小生の独断だと、バードバップと新主流派分水嶺となったのは、このアルバムかなぁ、なんて思います。ハイ身の程も知らずにスミマセン。
 てことで、ここからジャズは、ウイスキーとタバコとドラッグの時代から、コカコーラとハンバーカーとビタミン剤の時代に入ったのでした。これはもうジャズじゃないという人もいます。確かに今までのジャズではない。これからのジャズなのだから。その「処女航海」を続けて数十年がたちますが、まだまだその音の新しいことったら、これが東京オリンピックの翌年に録音されたなんて信じられません。それほどまでに「今」を感じさせます。でもやっぱり全曲続けて聴くと、ちょっと飽きるかも。
★FACE TO FACE BABY FACE WILLETTE
 60年代のキーボードといえば、オルガンもピアノに抗してかなりがんばっていたそうです。そこで、オルガン奏者も一枚だけご紹介。ジミー・スミス御大が知名度も人気もあるけれど、小生の好みとしては、ベビーフェイス・ウォレットを挙げます。グランド・グリーンのギターともよくあっていて、とにかくノリがいい。
 一部のジャズファンはオルガンのオの字を聞いただけで、いやな顔をしますが、それって間違いなく、聞いたこともない結論のはず。それってとてもジャズファンのいやーな面の典型ですよね。まあ、「天童よしみを聞け」っていわれても、困るけどね。三曲目は一昔前の探偵ドラマのテーマ曲みたいでお楽しみ。