「まあ、取っちゃいましょうか」

(昨日の続きです)
 そして家に帰って、我らがイボたちを見る。首まわりにはちっちゃな絆創膏が十枚ほど。そしてうなじ(男でもこういうのだろうか)とお腹には、液体窒素で「冷えど」してパンパンに膨れたイボがある。
「あとで腫れますから、そしたらバンドエイドでも貼っておいてください」
 と先生がいった。確かにそういったもので覆わないと、もし何かが触ったときにソートーに痛そうである。はたしてこんなに大きくなったものが、消滅してくれるのだろうか。

 ということで、次はこの先生が紹介してくれた、やや大きな病院へ行く。
 受付で紹介状を提出すると、なにやら分厚い板チョコのようなものを渡される。見ると表示板があって、患者はどうしたらいいか教えてくれるのだ。だから診察室の前で待つ必要もない。予約制だけど、よくある大学病院のように、予約時間から何時間も待たされるなんてこともない。ほとんどオンタイムで進行していく。持っていった本が読めなかった。
 診察室に入ると、私の左腕のシコリ探しが始まる。ちいさくて外からはよくわからない。
 「ここかな、ああ、そこそこ」
 なんて肩こりか指圧を受けているみたいな会話で、患部を発見。先生はそこをマジックで印しを付けて写真に撮る。
 そしておもむろに電気かみそりのような機械を手にして、私の腕にあてるのだった。
 ええっ、産毛でも刈るのかなぁ、と思ったけど、さにあらず。先生は近くの魚群探知機のような画面を見ている。
 「それって、超音波検診みたいなものですか」
 と聞くと、彼はニッコリと微笑む。
 「そう、だけど、表面5ミリだけしか見えないんだ。そこまでが皮膚科の領域だからね」
 なるほど皮膚科専用の医療機器ってわけだ。
 「あっ、これだね。この暗く見えるこのあたり、大丈夫だ。赤くないから、悪性じゃないね」
 「どうして大丈夫なんですか」
 「いや、悪性だと血液を集めるんだ。で、この機械は血液に赤く反応するわけ。でもホラぜんぜん赤くないだろ」
 そのとき、画面に赤い模様が立ち上がった。
「先生、いま真っ赤になりましたよ」
「いや、こりゃ雑音だよ。こんなふうにやると出てくるんだ」
 そういって先生は自分の手に機械を擦りつけた。なるほど画面に赤い線が出てくる。
 「でもまあ、取っちゃいますか。手術になるけど・・・」
 「そうですね。取っちゃいますか」
 しかしまさかその手術というのが、あんなものとは、そのとき知るよしもなかった。
(この項目続きます)