京都へっぽこ珍道中 その十九

五重塔近くのその店では、自分用にサルのストラップを買った。なぜか、唐辛子がぶら下っているのだが、店の主人は、
 「もし、それが取れても拾わないようにね。これが落ちたってことは、厄が落ちたってことだからさ」という。
 へーえ、そうなんだと、納得。しかし商品が壊れていくことに意味があるなんて、ちょっと面白い。
 つらつら歩いていると、どうやらまた二年坂に出る。
 また、とある店に入って、物色していると、帳場に座っていたおばさんが突然ツレに声を掛ける。
 「ああ、お客さん、いいですか」
 けっこう大きな声で、そんな風にいうものだから、知らないうちにツレが何かしでかしたのかと勘違いしたのだが、
 「そのスカート、とても素敵、ちょっと見せてくださいな。あれーぇ、接ぎはどうなっているのかしら」といって、おばさんはツレのスカートを触る。
 「へーぇ、こうなっているのか。そうね。こうなのね。ちょっと難しい合わせ方ね。ほら、こっちに来て、見せてもらいなさいな・・・」
 と、おばさんは店の女の子にまで声を掛けている。そんな騒ぎにツレはまんざらでもなさそうである。
 まあ、私はそんな騒ぎの理由なんぞ、まったくわからないのだが、彼女の既製品のスカートの縫い方というか合わせ方が独特なので、裁縫に興味のある店のおばさんの目に、シンクロしてしまったようなのだ。
 結果、ツレはご満悦な顔で、
 「これで私のセンスは京都でも認められたんだわ」と思ったらしい。
 でもサンプル数はまだ一つだし、土産物店のちよっと変わったセールス・トークという可能性も残っている。
 それから二人は維新の道を横断して、秀吉の妻、ねねゆかりの高台寺の前にたまたま到着した。
 で、まあ入ってみるか、ということになる。まったく行き当たりばったりなのだ。
 すると、庫裏の前で何やら巨大なクモのようなモノがギーギーと動いているではないか。ええっ、これはいったい何だろう。