京都へっぽこ珍道中 その二十

 しかし昨日と今日(11月18-19日)、ほんの少し京都を散策しただけなのに、歴史ってものが、ここにこれほど濃縮されているものとは思わなかった。いわば実物歴史博物館である。都である時期が長かったので、当然のことといえるかもしれないけど、それがしっかりと残っているところ、あるいは残そうとしているところがエライ。
 「あっ、こっちに室町後期」、「あそこに、ほら幕末」、「あれれ安土桃山ですな」という感じで、ふらふら歩いていてもすぐに歴史イペントのポイントに出くわしてしまう。
 さて、一行は「ねね」ゆかりの高台寺に入った。私たちを迎えてくれたのは、なんと四本足と腕(?)が一本、それにキャタピラーを持つ、クモのような重機だった。庫裏の入り口近くで、足みたいなモノをバタつかせている。これはいったい何なのか、見た目には前にも後にもほとんど動かない。まあ、これをずっと見ていたい気もするのだが、そうもいかずに奥へと進む。
 グルリと裏側を回って、書院から入って方丈を出ると、前には白砂を敷き詰めた庭が見える。おもしろかったのは、その端がちょこんと上を向いていることだ。まるで飛行機のカタパルトのようだ。写真を撮っておけばよかった。
 臥龍池に浮かぶ紅葉を見てから、臥龍廊を少しだけ昇ると霊屋となる。ここには秀吉とねねの木像が安置されているところ、なのだが、なんとそのまん前に若い男性が安置されているではないか。どうやらこのあたりでコケて、少し頭を打ったらしい。女性の係員と彼女らしい人が付き添っている。眉毛近くを切っているようだった。
 彼は「もう大丈夫です」などと、ゆっくり起き上がろうとするが、係員はそれを留めて、「もう少し横になっていた方がいいですよ」という。でも彼が横たわっている場所はかなりの人通りで、みんなが不思議な顔をして、横になっている彼を眺めていく。これもまたチト辛い。
 さらに順路を進めると、また斜面を上ることになる。詩仙堂も、銀閣寺も、龍馬たちの墓もみんな坂そのものか、坂に面して建てられている。それは全体を眺める場所があり、また京都の街並みを見られるということでもある。
 考えてみれば、これは平地では得がたい「利便性」といえるだろう。
 さて、その斜面の上にあったのは、傘亭と時雨亭である。なんとあの利休の意匠で、伏見から移築されたのだという。案内の係員の話によると、時雨亭には舟を着ける場も設けてある。そんなものが丘の中腹にあるというのも、なかなかいい。私は想像で中空に舟を走らせてみた。★しかしこの重機、いったいどんな仕事をするのだろうか。今回の京都旅行で最大な謎だった。
★庭園の紅葉。こういった写真はシャッタースピードの設定が難しい。
臥龍池にもみじ落つ。