京都へっぽこ珍道中 その二二
急な階段のある大きな門へは近づかず、手前のなだらかな坂を上っていった。寺の名前は知恩院。
しかしあの門、大きく感じたはずである。調べてみると、この三門は高さが24mもあって、木造の門としては世界最大級なのだという。まあ「級」というところが微妙なのだが。
途中に法然上人とか書かれた看板を見つける。まさにまた歴史の教科書だ。
「ええと、法然といったら、天台宗だっけ。ウチの寺と同じだな」
「あれ、あすこに浄土宗ってあるわよ」
「あちゃー、そうか天台宗って、法然とばかり思ってたけど、違うんだ」
とおバカな会話をしながら境内に入る。このバチアタリ。ちなみに、言わずもがなではありますが、天台宗の開祖は最澄です。
なんとここは拝観料を取らない。それだけで法然さんがありがたく思えてくる。
入り口から斜めに進んだところに、御影堂という、これまた大きなお堂があって、何人かが靴を脱いで上がっている。私たちも先人の轍を歩むこととする(大げさな)。一人の白人系青年も私たちと同じように上がって器用に正座した。
そこは畳みが何十畳も敷かれていて、どころどころに参拝客がきちんと座って、お坊さんのお経を聞いている。一人のお坊さんが終ると、次の人に代わる。なにやらトップスター夢の競演といった体である。
その気持ちいい声に心穏やかにしていると、なにやら外から何かをがなる声が聞こえる。トランジスターメガホンのその大きな声が耳に痛い。どうやら閉門の時間になったので、外に出るようにと警備員ががなっているのだ。
しかしお坊さんはそんなことはどこ吹く風とお経を続けている。でも係員が扉を閉めに掛かる。やはりもうここを出なくてはいけない。まったく意味はわからないが、いい感じのお経を背中で受けながら、私たちはお堂を後にした。まだ中にはしっかりと座っている白人青年がいた。外へ出ると、警備員が何人もいて、参拝客を羊でも囲みこむように、門へと誘う。なんだかなぁ。
知恩院を出るともう夕暮れである。来た道を少し戻り、市民の森の脇を通って、昨夜少しだけ入った八坂神社を抜ける。
少し南へ下るとツレのお目当ての店、やよいがある。ここのちりめん山椒が絶品だという。さらにここで飲める抹茶がまたいいとのことだが、私は別に喉が渇いていなかったので、それを断った。すると、そのあと、「なんてもったいないことを・・・」といわれること数回。いやはや、女の価値観は別宇宙に浮かんでいるかのようだ。★やよい近くの風景。この時ばかりは、電線がなければいいのにと思ってしまった。まあ、全部地下に埋めてしまえという考え方には組しないけれど。ところで、向こうの建物、あれはいったい何なのだろう。