PR誌拾い思い

 新潮社のPR誌「波」1月号を読んでいたら、二ヶ所にクロパトキンという名前が出てきた。最初はクロポトキンかと思ったが、さらあらず。彼は日露戦争当時のロシアの将軍なのだ。
 まずは連載4回目の「未完のファシズム」で、のちの青島戦役に比するカタチで日露戦争を取り上げている箇所、彼の回想録が諸外国に於ける日本軍のイメージを醸成することになるが、その事実関係に異議を唱えている。
 もうひとつは連載13回目の「長谷川伸と日本人」で、普段は読んでいないが、サブタイトルの「『坂の上の雲』と捕虜」に惹かれて目を通してしまった。曰く、司馬さんは日露戦争の日本側の勝利が、クロパトキンの個性によるものであるとしているが、はたしてそれはどうだろうか、また異議を呈するものだ。
 薄いPR誌に同じ事象が取り上げられるのは、実はよくあること。
 テレビドラマの『坂の上の雲』の影響があると考えることもできる。
 司馬さんは生前、この小説の映像化を拒否していたはずだ。映像化されるとディテールが削がれ、安易に国威高揚作品になってしまうと危惧したのかもしれない。
 しかし映像化はされてしまった。かくしてそれを論ずる試みは、たぶん多いに越したことはない。きっと司馬さん自身がそれを願っていることだろう。
 そうそう、和田春樹さんの『日露戦争』という本があったはず。ええっといくらだったっけ。