シアリングの子守唄

 ジョージ・シアリングが亡くなったという記事が、新聞に小さく載っていた。というわけで、唯一もっている彼のCD『シアリング・オン・ステージ』を聴く。
 ライナーノートを読んでいると、ギターとハーモニカがあのトゥーツ・シールマンスなのだった。ジャケットには、眼鏡を掛けたまじめそうなおじさんが、エレキギターを抱えている。1958年当時、ジャズでエレキギターというのも珍しかったのではないだろうか。彼は映画『タクシードライバー』のテーマでハーモニカを演奏し、『セサミ・ストリート』のテーマも作曲しているという。なかなか芸達者ではないか。個人的にはビル・エバンスと協演した『アフィニティ』がいい。こちらは1978年の録音だ。
 さて、シアリングといえば『バードランドの子守唄』となるが、残念ながらこの『オン・ステージ』には入っていない。なのでサラ・ボーンとクリス・コナーのその曲を引っ張り出して聴いてみた。両方ともに一曲目である。
 この『バードランドの子守唄』は、以前書いたこともあるけれど、タルコフスキーが学生時代の1956年に制作した映画『殺人者』で、自らが口笛でこの曲を吹きながらチラリと登場している。ジャズが「禁止」させていた時代、彼はかなりの危険を冒しつつ、カッコをつけていたというわけなのだろう。