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oshikun2011-02-19

 先日、池井戸潤さんの『下町ロケット』を読み終わりました。中学生時代にアポロ11号を「体験」した世代としては、いろいろと感慨深いものがあります。
 途中まではちょっと軽めの企業物といった感じで、その後の展開にかってに気をもんでしまったのですが、大企業とのつばぜり合いが本格的になるあたりから、盛り上がってきます。
 しかしやはりいい感じなのは、実際に噴射実験をする場面からでしょうか。ここでやっとロケットに近いモノが出てくるのですから。まあ、少し遅すぎるけど、実験失敗の検証作業をしているシーンを自分の頭の中に組み立てることで、ロケットファンは安心するのです。
 考えてみれば、あの当時、つまり1960年代末から70年代初めに中学生だった男の子のかなりの部分が、いつかはロケットに関係する仕事に就くんだと心に誓ったのでした。でもまさにアポロ計画の成功率といわれた99.9999%のご同輩は、別の道を歩むわけです。だけどその多く人はその頃の心持ちを胸に秘め続けているはずです。
 この小説はその心を、「ほれほれ」とくすぐってくれます。やや図式的だけれど、大企業や銀行の精神と、中堅企業のそれとの違いもまた心地いいものでした。
 ただし舞台の上池台って、「下町」なのだろうか。また昔のロケット少年の認識だと、静かな海は「巨大なクレーター」ではないし、液体酸素も燃料というよりは酸化剤だと思うのだけど、どうだろうか。
 そうそう、この小説の主人公たちは、燃料と酸化剤を燃焼室に送り込むバルブの製作をする。私も中学時代に科学部でカリカリと「ロケット」を「設計」していて、その「図面」の一部に電磁バルブがあった。その名の通り電磁石で開閉するバルブを自分で発明したつもりだったが、それを見た父親から「オレの会社で作っているぞ」といわれてしまったのだった。

 さて、別の話。ある作家さんのツィッターを読んでいたら、どうやら小松左京さんの短編「お召し」がどの本に収録されているのか、ということが話題になっているようす。で、自分の書棚の『時の顔』(角川文庫)をパラパラ開いたら、その作品がしっかり入っているではないか。
 でも、恥ずかしながらツィッターってどう使っていいのかまったく理解していないし、そもそも私なんぞが「どーも」なんて出て行っていいものかどうかもわからない。ということで、やや意味不明ではありますか、そんなことをここに書いておきます。

 そして蛇足。
 前回の書き込みで『夕陽のガンマン』と『愛する時と死する時』の両方にクラウス・キンスキーが出演していると書きましたが、クラウス・キンスキーのウィキペディアには後者の記述がありません。しかし『愛する時と死する時』のウィキペディアには書いてあるし、映画のエンドロールでも見かけたので、出演は間違いないでしょう。

★『下町ロケット』の表紙。上池台の坂道の向こうからロケットが打ち上がる。ちなみに本編中にそのようなシーンはありませんので、あしからず。タイトル横は『時の顔』。