寄せる波に足を濡らして

 あきらさんがコメントしてくれたので、『渚にて』についてもう少し。
 繰り返しになるけど、あの映画をテレビで観たのは、小学校のたぶん上級生の頃で、またまたその日は親戚の家に、やや太めの従兄弟と泊まっていた。というのも、近くにサマーランドという娯楽施設(!)があって、おじさんがそこに連れて行ってくれることになっていたからだ。夏でもないのにプールに入れるという、当時の子どもにとっては奇跡的なことに、僕ら二人ははしゃぎまわっていた。
 そんな男の子におじさんが、戦争映画をやるようだから見たら、といって寝室にあてがわれていた部屋のテレビを点けてくれた。そんなことがなかったら、この映画とは出会えなかっただろう。
 映画が制作されたのは59年だという。ちなみに原作の小説は57年の出版だから、スタンリー・クレイマー監督は本が出てすぐに映像権をゲットしたのだろう。で、自分がそれをテレビで見た年ははっきりはしないけれど、たぶん66年前後、テレビ放映としてはかなり早い時期だと思う。まずは潜水艦が現れるが、ドンパチはまったくなし、しかし、なぁーんだかなあ、と感じたのは一瞬だけで、物語の展開に子どもたちは引き込まれていった。
 ああいった大状況にあれだけ冷静でいられるか、みんながみんな自分の仕事を淡々とこなせるのかは不思議だけれど、僕たちはそのテーマの大きさに圧倒されてしまったようだ。
 しかしやはり子どもだ。翌日のサマーランドの「渚」もおおいに楽しんだ記憶がある。
 ところで、この『渚にて』。まずタイトルがいい。『オン・ザ・ビーチ』のほぼ直訳なのだろうけれど、日本公開時によくやるように『壮絶!! これが人類滅亡の日だ』などとしなかったのは賢明だった。ただし小説の方は副題として「人類最後の日」とあるけど。
 さて、この『渚にて』というタイトル、どうやらコンラッドの詩からの引用だそうだ。でも、自分としては危機が、寄せては返す波のように、足元にひたひたと近づいてくるものの象徴のように感じる。そういえば我らが危機の輻射点である福島第2原発も、まさに「オン・ザ・ビーチ」にあり、またそれゆえに危機たらしめたのではあるが。★沖縄・部瀬名の渚にて