永遠の幼稚園児

 先月のことだけれど、東京近代美術館で開催されていた『パウル・クレー展』に行ってきました。会期末とあって、会場はかなりの人出だが、チケット売り場で待つというほどではない。
 クレーは昔から好きな画家の一人だけど、展覧会は初めて、でまず驚いたのがその作品の小ささ。画集は何冊か持っていたけれど、サイズなんてあんまり確認しないもんね。
 通路にツイタテのように展示されている作品もあって、なんだろと見るとなんと両面に絵が描いてあるのだ。そんな展示が何点もある。またクレーはひとつの作品を何分割かして独自の作品にしたり、別の作品を組み合わせてひとつの作品にしたりと、奇抜なことをやっている。これが微妙にいい感じになっているところが芸術なのだろう。
 そうそう、昔々幼稚園で画用紙をクレヨンの何色かの明るい色で塗りつぶし、その全面を黒色でまた塗りつぶし、それに下絵を被せてクギでなぞると、とても不思議で魅力的な作品が、幼稚園児でも作ることができた。クレーもこれと同じようなことをやっていたのだ。
 彼のたくさんの作品を前にして、私は一瞬だけ50年も前の幼稚園の教室にいる。クレヨンのにおいが漂う。そんな感覚に囚われつつ会場を出ると、チケット売り場には長蛇の列ができていた。