いろんな海を読んでみたい

 森見登美彦さんの『ペンギン・ハイウェイ』を昨日読了。
 実はアルセーニー・タルコフスキー(*)の詩集を翻訳した坂庭淳史さんのブログに、この本と『ソラリス』との関係が書いてあったので、勇んで読み進めたというわけです。それに日本SF大賞も受賞しているしね。
 で、後でわかったことだけど、森見さん自身も自分のブログでちゃんとそのことに触れているんだよね。でももちろん、『ソラリス』を読んでなくてもこの本を楽しめます。
 というか、実際のところ、『ソラリス』を読んでいないほうが問題なく楽しめるのではないか、とも思う。レムを読んでから、こちらを読むと、どうしてもあれはあれだよね、なんてことを解釈しながら読み進めてしまうことになるからだ。
 さて、お姉さんはハリーだということはわかる。でもアオヤマくんはクリスだろうか。しかしほんとうは役割分担なんてたぶん重要ではなく、その根本はやはり草原に出現した「海」の存在ということになるのだと思う。さて、あれをどう考えるか・・・・。
 坂庭さんもブログで同じようなことを書いていたけれど、主人公が子供という点がニクイ。最後にホロリとさせられるけど、それは彼にはまだ可能性と気持ちの余裕が十分にあるがゆえなのだと思う。その点『ソラリス』のクリスはわずかな可能性のことでも悩んでいる。
 なんてことを書くと、レム解釈のレールから外れることになるかな。
 ということで、この本の判断はちょっとお預け。
 今日からはなんと大江健三郎さんの『治療塔』を読み始めている。
 洞察力のある方は何ゆえかはわかるかもしれないけど、風呂敷を広げすぎて、どうも月末までに間に合いそうにない。こまったなぁ。

注(*)もちろん、アンドレイ・タルコフスキーのお父さんです。