映画人生の大団円的役どころ

 以前から友人に薦められていた『グラン・トリノ』を昨晩やっと観る。実にいい。
 イーストウッドはあれだけ歳をとっていながら、こんな芝居ができるのだという、まさに画期的な役どころ。とうぜん年齢的には老人なんだけど、老人を演じてはいないもんね。
 英語をちゃんと理解できないのが歯がゆいが、字幕だけでも丁々発止な会話の絶妙さがちゃんと理解できる。もろ人種差別主義者かと思わせといて、イタリア人の床屋のシーンでそれが「趣味」というか「癖」なんだということがわかる。
 そしてラストシーン。こんな展開は別の映画にもあったけれど、まさにダーティ・ハリーっぽい安易(失礼)な結末を想像していたわれわれを、小気味よくだましてくれる。このシーンは、前半の不良グループとの接触で「予告」されている。というか、そこで彼らに刻み込んでおいた記憶をイーストウッドがちゃっかり利用するわけだ。
 ええと、この映画ってイーストウッドのとりあえずの最新の作品なのだろうか。もしそうだとすると、マカロニウエスタン、ダーティ・ハリー、そして刑事役などを演じてきた彼の大団円の役どころとして、「いょ、お見事!!」と拍手したい。もちろん、もっともっと作品を観てみたいのだけれど。

追記:さっそく調べてみると、イーストウッドは『グラ・トリノ』を俳優最後の映画と位置づけているという。ちなみに彼はその後、3本の映画を監督している。