エリセ来日に思ったこと

 ビクトル・エリセが日本に、というか奈良にやってくるのですね。彼はいまスペインで何をしているのだろうか。
 考えてみれば、私たちは彼がちゃんと完成させた作品をほぼ観てはいないことになるのだ。
 『挑戦』は共作だから当然3分の1だし、『ミツバチのささやき』は、当初後半が想定させていたらしい。『エル・スール』も同様に南へ行った後の話があったようだ。『マルメロの陽光』は観ていないのだけれど、完成されない絵を追った映画ということになっている。ということで、どうやらエリセにとって未完成というのは、自らの主題であるのかもしれない。
 そういえば10年に一度どころか、最近はもう20年以上も、ちゃんとした劇映画を撮っていないけれど、その間にも数多くの企画を上げては没にしているようだ。
 しかしまあ、私もそんなことはいっていられない。このブログ唯一のフィクション『第2会議室にて』は、山場に至らずに頓挫しているし、「クルマに関するエトセトラ」や「隣りの旅客」、なにより「『ミツバチのささやき』をささやく」が宙ぶらりんである。
 誰かが覚えているなんてことはないだろうが、自分自身で始めたことだから、ちゃんとケリをつけなくてはいけないと、エリセが日本にやってくることを知って、思ったりしている秋なのだった。
 追伸:と書いてあとで気づいた。彼は『マルメロの陽光』のあとに『10ミリッツ・オールダー』という、何人もの監督が短い作品を寄せた映画に参加していたのだ。これは2002年の製作だから前作からちょうど10年目。これでいうと次の作品は、来年の2012年ということになる。はい、期待しています。