エリセとアナの視線

 ビクトル・エリセ監督が日本に来たことは知っていたけれど、どうしてなのかを今日の「クローズアップ現代」で知った。
 3.11をきっかりに、やはり映画監督の河瀬直美さんが呼びかけ人となり、21人の監督によって製作された、ひとり3分11秒の作品のアンソロジー、『A Sense of Home』の公開イベントのために来日したのだった。特にエリセ監督は来日を強く希望したという。
 そして彼の作品にはなんとアナ・トレントただひとりが出演している。
 番組ではその一部が紹介された。舞台の出番を待つ女優のアナが楽屋でその準備をしつつ、ビデオレターをパソコンで送る。その内容はまさに福島原発の問題に触れるもの。これほど直裁的な表現はエリセらしくないようだが、『ミツバチのささやき』や『エル・スール』の内に込めた主題からは「当然」のことともいえるだろう。
 アナはやはり歳を取った。でも、まっすぐに前を見るその視線に変わりはなかった、と思う。