人類は月着陸を見ていたのか。

 今日BSで放送された映画『オーバー・ザ・ムーン』を、ついタイトルに惹かれて観てしまった。時は1969年の夏、舞台はよくわからないがアメリカの片田舎で、あのロックフェス、ウッドストックの会場近く。
 とある一家が、家財道具を満載した車を走らせて、サマーバケーションを楽しむために湖の畔のやや掘っ立て小屋風の別荘地へ向かう。
 メンツは夫婦と14歳の娘、5歳ぐらいの息子、そして夫の母親の5人。しかし旦那は仕事が忙しく街に戻らなくてはならない。なぜなら彼の仕事はテレビの修理、みんなは7月21日に迫った月着陸を見たいがため、そこいらの壊れたテレビをどんどん彼のところに持ち込むのだ。
 かくして旦那のいない別荘地で妻はよろめく。といったあんばいに物語は進行していく。しかしまあ、あんまり深みのない映画だな。
 ただし60年代末の雰囲気はたぶんうまく表現されていると思う。そして月面着陸の瞬間に歓喜する人々もいい、のだけれど、あれ、なんか変だ。
 どうやらみんなあの有名な、着陸寸前の月着陸船から月の表面を写した映像を見ているのだけれど、あれって生中継では放送されなかったんじゃなかったっけ、とおぼろげな記憶を頼りに書いてみる。あのときはただヒューストンの管制センターの風景、主にそのパネルに表示された着陸船の位置と、そこからの音声がずっと流れていたはず。
 ということで『人類、月に立つ』(アンドルー・チェイキン)を紐解いてみると、どうやら管制センターにも音声が伝わっているだけのようだ。
 うーむ、あの69年の夏を月着陸とウッドストックを素材として描くという発想はいいのだけれど、ね。