天体望遠鏡への遠望 その2

 (昨日の続き)
 ちゃんとした天体望遠鏡を買ったのは、高校生になってからだ。昨日も書いたように経緯儀式だと星を追尾するのにとても苦労する。その点、赤道儀式など一つのつまみを回し続ければ、対象はほぼファンダーの中にいてくれるのだ。だから多少は値が張っても赤道儀式を手に入れたかった。
 そのことをちょっとだけ説明しておく。星は地球の自転の関係で、地上からの見た目では地軸を中心に回転している。その地軸の高さは緯度とリンクしていて、赤道付近ではほぼ水平線、極地方では天頂となる。つまり地軸は極点、そう北極点か南極点の延長線上にある。日本での夜空は当然、天の北点である北極星の近くを中心に回転している。念のためにいえば、この北極星はたまたま北点近くにあるからの目安として使われているだけで、その星を中心に夜空が回っているなんてことはありません。
 このように夜空の星は動くので、タテヨコ方向にしか動かない経緯儀はじっくりと星を見ることはできない。ではなぜ赤道儀が追尾しやすいかといえば、その回転軸がそのまま北点に向いているので、その機構そのものに星の動きが仕組まれているというわけなのだ。うーむ、わかったかなぁ。
 で、望遠鏡の話。私がやっと手に入れたのは直径10センチの反射鏡を備えたニュートン式。当時は3万と少ししたはずである。
 まずは月面に向けてみる。この瞬間が「感激!!」なのか、それとも「なんだ、写真と同じじゃん」とでこの後の人生が決まってしまうかも。当然私見だけれども、望遠鏡で見る月面は写真とはまったく違う現実感があるのだ。まあ同時性といってもいい。ポッカリと浮かんでいる遠くあやふやな月が、手に取るように目の前にあるという感覚。要はそれを感じるか感じないか、なのだと思う。
 ところで初心者は月というと満月を見たがるものだが、これが大きな間違いで、望遠鏡にとって満月ほどつまらないものはない。光が全面的に当たっていているので、陰影がまったくなくなってしまうのだ。まあティコなど放射される光条を観るのにはいいかもしれないけど。
 とにかく月を見るのなら欠けた月、上弦でも下弦でもいいから、半分程度に欠けた月がいいと思う。上弦というのは見た目の左側が影になった月で太陽が沈む頃、南の空の一番高い場所にある。下弦はその逆で太陽が出る頃、一番高い。つまりは上弦の方が観測しやすいよね。(はい、続きます)