天体望遠鏡への遠望 その4

(昨日の続き)
 さてピッカピカの天体望遠鏡は手に入れたものの、当時の私のカメラは父親からのお下がりの距離計式35ミリ。普通のスナップを撮る分には申し分ないのだけど、レンズに入った光がファインダーでは確認できない。つまり月がしっかり入っているかとか、ピントが合っているかとかがわからないのだ。
 それでも何枚か根性で撮影してみた。するとピントなどの問題以外にも別の障害があることがわかった。それは通常の写真では顕在化しないのだけれど、望遠鏡を通すとレンズにカビのようなものがあり、それが写りこんでしまうのだ。
 で、駅前のカメラ店に相談してみると、そこのオヤジさんもなかなかのもので、ほとんどわからない程度に取ってくれた。たぶんレンズとレンズの間にあったはずだから、作業は大変だったに違いない。
 しかしそれでも距離計式のカメラの使いづらさ、というか使えなさはどうしようもない。そんなこんなで、一眼レフカメラへの憧れは日に日に高まっていくのである。
 そしてどうにか小遣いやバイトをしたりして貯めた3万円を握り締めて、写真部の連中から聞いていた新宿のあの店へと出向いたのではあった。
 そう、あのヨドバシカメラである。プレハブ作りの不思議な店で、当時はほんとうにカメラと周辺機材しか売ってなかったと思う。新宿西口はまだほとんど開発されていない。店の前には大きい黄色いチラシが置かれていて、そこにその日のカメラ類の価格がズラリと並んでいたのだった。
 しかしそのとき、私はトンデモない災難が待ち受けているとは知る由もなかったのだ。(ハイ続きます)