天体望遠鏡への遠望 その5
(昨日の続き)
買いたかった一眼レフカメラはミノルタSR−T101。当時廉価版ながらに定評のあるモデルで、ヨドバシカメラなら標準レンズ付きで3万円と写真部のヤツから聞いていた。あくまで現在の記憶なので価格自体はやや曖昧である。たしか次期機種のSRスーパーなどというのが出るとかで、それなりに価格が下がっていたのかもしれない。
で、おっかなびっくりヨドバシカメラに入った純朴な高校生が、その売り場にたどり着くと、なんとそのカメラはレンズのグリップなどがマイナーチェンジしていて、2千円ほど高くなっていたのだった。
ガーン!!!
当時の高校生にとってこの二千円は、越えるに越えられない深き川なのである。
今とは違ってそうとうにホコリっぽかったその売り場では、一人のおじさんがまるでバナナの叩き売りのように、カメラのボディやレンズを後の棚から箱ごと取り出して、まさにポンポンと売っている。小心な高校生ながら、新宿くんだりまで来ておずおずと帰るのも悔しいし、みんなに何をいわれるかわからない。そこで一世一代の勇気を奮って、そのおじさんに聞いてみた。
「すみません。SR−T101のレンズ付きセットの古いタイプはもう無いですか?」
それを聞いたおじさんは一瞬だけ不思議な顔をしたが、すぐに事態を察知してくれた。
「お金、ないんか(なぜか大阪弁まじり)」
「えっ、は、はい」
「なら新しいんの、前の値段でいいで」
こうして私とヨドバシカメラとの40年近くに及ぶ蜜月は始まったのである。たまには浮気もするけどね。
追記:棚からカメラを取り出してみた。父親からのお下がり距離計式カメラもミノルタでA3と書いてある。焦点距離は45ミリ。私たちの家族を一番たくさん撮ったカメラだろう。セルフタイマーのポッチが最初から曲がっている以外は、どこも壊れていない。もしかすると私よりも寿命は長いかも。
私が初めて買ったカメラが一眼レフというのは生意気だが、家に他のカメラがあったのだからしょうがない。ミノルタSR−T101に付いていたレンズの焦点距離は50ミリ。これ以外のレンズを嵌めたことは残念ながらない。こちらには修学旅行時にぶつけた凹みが残っている。