冷や汗かきつつ恐悦至極のご報告 その2

 (昨日の続き)
 瀬名さんが日本SF評論賞の選考結果を報告して、優秀賞の渡邊利道さんと選考委員特別賞の私が登壇する。といっても壇があるわけではありません。
 で、司会の増田さんから受賞の挨拶を求められたのだが、あれれ、ネット上の式次第にはそんなこと書いてなかったのに、と焦る。でも渡邊さんがしゃべっているうちに態勢を立て直せばいい、と選考委員特別賞だったことを一瞬だけありがたがるが、渡邊さんのコメントは一瞬で終わってしまった。
 しかし、ほんとうはこんなことを事前に考えてはいた。
 「私の拙い文章に対しまして、このような賞をいただき、誠に身に余る光栄です。関係者の方々には御礼申し上げます。このような賞をいただくのには少し年齢が高く(ここ少し笑う)、しかもまだまだSFに関して新参者なので、ご期待にお応えできるかどうか、はなはだ心もとないのですが、今回の受賞で背中を押され、一歩でも二歩でも前へと歩み出せたらと思います。本日はほんとうにありがとうございました」と。
 でもマイクを掴むとそんなことはどこかに空中浮遊してしまい、結局何をいったのか、この世の中で本人が一番知らない人になってしまった。
 そのあと、瀬名さんから二人の作品についてお褒めのコメントをいただく。いやはやありがたい。
 それから記者の方から作品を書いた経緯とか、今後のこととかを聞かれたのだが、これもほぼ空中浮遊して憶えてはいない。ツレに聞けばいいのだけど、コワくて聞けない。
 ただ言葉に詰まって横の瀬名さんの方を向くと、優しく微笑んでいらしたことだけははっきりと記憶している。そして初めての写真撮影。はたして自分はどんな顔をしていたんだろう。カメラのレンズが少しだけコワかった。
 そんなこんなで、二人は席に戻る。はい、冷や汗一年分だった。
 次は本日のメインイベント、日本SF大賞の発表である。記者席にも緊張が走る。五人の選考委員が登壇、代表して豊田有恒さんが選考結果を報告する。
 大賞は上田早夕里さんの『華竜の宮』、特別賞は横田順彌さんの『近代日本奇想小説史 明治篇』、そして今年亡くなられた小松左京さんに特別功労賞が贈られる。
 選考委員は上田さんの才覚を讃え、横田さんのご苦労を労い、そして横に座っていた瀬名さんの候補作『希望』についてチラリと触れ、笑い声が会場に広がる。
 後の席ではツレが小さな声で驚喜している。宮部みゆきさんのファンだったというのだ。
 選考委員が退場する際に委員の一人だった堀晃さんから「おめでとう」の言葉と握手をいただく。私は第2回創元SF短編賞で堀晃賞を受賞、贈呈式やその二次会でもお会いしていたので、まさに感激の瞬間。さらにこのことを堀さんのサイトでも触れていただいた。ありがたいことです。
 やがて上田さんと横田さんが登壇。やはり上田さんの挨拶は立派なのです。私は身を小さくしたいが、やはり大きいままだった。小松さんの話のときに少し言葉が詰まってしまった。その無言の間がみんなの涙腺をこじ開ける。横田さんの貫禄もなかなかのもの。今度はぜひ特別功労賞をいただきたいと、ユーモアのセンスも忘れない。こうして選考発表会は終わりに近づいていく。
(まだ続きます)