無念……。

 確かこのブログのプロフィールにもあったはずだけど、私の好きな三大映画監督といえば、アンドレイ・タルコフスキービクトル・エリセ、そしてテオ・アンゲロプロスだ。
 エリセは作品の数が極めて少ないが、とにかくもまだ存命である。タルコフスキーは作品こそエリセほど少なくはないが、多いとはとてもいえないまま、若くして病気で無念の死を迎えた。
 しかしアンゲロプロスはもう76歳、作品の数もまた他の二人よりは多い。
 しかし、しかしである。報道によれば現代史三部作の三作目に取り掛かったばかりだという。彼の無念さはいったいいかばかりであったことだろう。
 このギリシアの、そしてヨーロッパの情勢がかくも動こうとしているとき、さらには地中海の向こうの世界、その全体が大きく変貌しようとしている時、世界はアンゲロプロスという表現者を必要としていたのだ。彼の描く世界にまだ光があれば、それは数多の論文や評論、そして弁舌よりも示唆に富むものであったはずだ。
  それが一台のオートバイとの不幸な接触により消えていった。人間は未来に伝えるべき貴重な財産のいくつかを、この瞬間に失ってしまったといえる。


追記:いま自分のプロフィールを見たら、アンゲロプロスのことはまったく書いていなかった。私の記憶力はこの程度のものなのだろう。でも学生時代『旅芸人の記録』にスサマジイ衝撃を受けたのは事実です。
それからSFファン交流会の独断的レポートは今回お休みですが、ちゃんと終わらせます。