懐かしのマイ・ディスカバリー号

 昨日の続き。
 ハヤカワ・ノベルズの『宇宙のオデッセイ2001』を買ったとき、中学生だった私は、少し大人になった気分でいた。表紙の白い地の上には、真っ黒な和文のタイトルとグレーのクレジット、下には英文のタイトル。このタイポグラフィがまたいい。よくぞこの書体を選んでくれたと思う。特に英文の文字間は絶妙だが、和文のほうも見事だ。おさまりの悪るそうなこの和文タイトルを、うまく表現したものだと思う。
 シネラマとイメージを一にした和文ロゴもキライではないが、最近ややチンプ化しているような気がする。
 そしてこの上下の白の地に挟まれているのが、その先頭部分をにょっきと出したディスカバリー号が、漆黒の宇宙空間に浮かんでいる写真なのである。推進部分やアンテナは写っていない。しかもそのほとんどが影の部分であり、薄ボンヤリとした紺色で表されている。ただ船体の10パーセントほどが太陽の光を浴びて輝いている。ニクイことにこの写真の色に、ハヤカワ・ノベルズの文字色が合わせていた。
 うーん、土星までの航海(映画では木星だけど)なのだから、この光の方向でいいのかな、と一瞬思ったが、キューブリックに限って間違ったことをするはずがない、としておこう。
 さらにボッドのエアロックが開いていて、中の構造がほんの少し見える。コックピットにも明かりが点いていて、人の影のようなものがわかる。
 そんなたった一枚の表紙の写真だが、当時の中学生に大事な想像力の原点になってくれたはずだ。このディスカバリー号精子をイメージしたものだと、どこかで読んだときには、アリャリャリャと思ったけれどね。