タイレル社はそこに建つ。

 (昨日の続き)
 贈賞式と祝賀パーティが終わりそうな頃、二次会の案内が配られる。別の場所で日本SF大賞関連の集りがあるという。
 やがて会場には「蛍の光」が流れる。むむむ、そうそう懐かしい。中学校では「もう下校の時間となりました。教室や校庭にいる生徒は、すぐ下校しましょう」と放送部のアナウンスが流れるんだけど、みんなは校門のあたりに集って、何やかやとしゃべくり合っていたものだ。今日もそんな感じなのか、しばらくみんなはフロアや受付前でたむろしている。
 で、下に降りようとしても、エレベーターホール前の人が乗ってこない。いっしょになった新井素子さんが「あれ、みんな降りないのね」といって、扉を開いたままにしておくボタンから手を離す。
 そのエレベーターには、さっきの高級クラブのスタッフの方々らしい一団が。あの谷間と接近遭遇である。
 でもまだ8時少し過ぎで、ニ次会の開始時間にはだいぶある。と、1階のフロアで評論賞チームの宮野さんと会う。彼女には評論賞贈賞式のレポートを書いてもらっている。かたじけない。いろいろと昨年の贈賞式のおもしろい話を聞いてしまう。でもここでは書けない。
 で、また雨の中、ニ次会の会場へと移動。
 ここではちゃんと、上田早夕里さんに評論賞贈賞式でのコメントのお礼を伝えて、巽教授にもいろいろとごあいさつ、藤田直哉さんとも初めて会って、改稿の日々をぼやく。でも他の評論賞チームが来ないみたいなので、やや一人ぽつねんという感じになる。そんなことを察してか、早川書房の高塚さんにフォローしてもらい、どうにかの立て直し。
 そんなこんなで、時は過ぎゆき、ワインのおかげでいい気持ちに。会は11時頃にお開きになった。
 会場を出て、私は有楽町駅方向に向かうが、ガードを潜ってもそれらしきものは見えない。
あれ、あれは東京駅近くの大きな排気口だ、と記憶にある構築物を発見するも、その向こう側にタイレル社のような知らない巨大な建物がある。
 なんか変だ。
 突然見知らぬ未来社会に紛れ込んでしまったのか。あの排気口からすると、アッチが東京駅のはずだだけど、雨に煙るその先にそんなものはありそうもない、と思っていたら、目の前になぜか地下鉄の京橋駅へ通じるという階段がある。ええっ、どうしてここにあるのだろうと驚くが、案内版を見れば、そのまま上野駅までは行けるはず、と有楽町駅への到達は断念して、ここから帰ることに。階段を降りる足がおぼつかなかったのは、いうまでもない。
 後日、その不思議体験を確認するために地図を見たところ、ただ単に方向を90度間違えていたのだった。あのまま、その感覚で有楽町駅を目指していたら、とんでもないことになっていたはず、っていうのはナイショだよ。