30秒で崩壊した決心

 (昨日の続き)
 話は「ささま書店」のことに戻る。この古書店がいいのは、分類がキチンとできていて、本自体がキレイなこと、そして通路が比較的広いこと、などが挙げられるのだけれど、それよりも、なんというか、雰囲気がいいのである。
 こんなことをいってはいけないのかもしれないが、神保町や早稲田の古書店にはちょっとある、スマシタ感じというか、こちらがなぜか遠慮してしまうような、そんな感じがまったくないだ。
 それになぜか自分の本棚に似ている気がする。もちろん書店のほうが圧倒的に多いのだけれど、何か親近感みたいなものが湧いてくる。
 昔は古書店にいって、何冊かめぼしい本を見つけると、ほんの少しだけその本を棚からはみ出しておいて、最後にそれらを一通り再チェックして、実際に買うかどうかを決めたりしていた。一つの店舗で欲しい本が6冊とか7冊ともなると、1冊ぐらいは忘れてしまうことがあるからね。
 でもこのときはそんなことはしなかった。いわずと知れたフェルメールの画集、SF映画の大事典みたいな大判本、藤原新也さんの初期の写真集、四方田犬彦さんの古いエッセイ集、SF小説、などなど、昔ならきっと少なくとも10冊は買ってしまったかもしれない。
 そして確認した。もうそんなに時間はないし。でもどれも同じくらいの魅力のある本だ。そう思って、今日は1冊も買わないことに決めた。そして外に出た。
 でも何か寂しい。
 で、結局決心は30秒後に崩壊する。また店に戻って、4冊だけを買う。これはまあ一つの病気である。何を買ったかは、買わなかった本に悪いので(何をいっているんだか)ここでは書かないことにしておこう。