深夜ももんじがキューと鳴く。

 SFセミナーの夜の部、ひとコマ目は、「ジャパネスクSF探訪」に参加。
 語り手は鳴庭真人さんで、いろんなジャンル(といってもSFだけど)の小説の内容と、その中で日本がどう描かれているかが紹介される。鳴庭さんのお話を聞いていると、翻訳本を読むのと一味二味違っていて、アタマの中のイメージが直接英文的(なんてもんがあるのかいな)に凝結していくのだ。うん、なんとも不思議な感覚ではある。
 カバーデザインもまたおもしろい。イテキはこげんふうにワテらをみとんのかいな、という感じである。
 ということで時間は過ぎゆき、アレマアと『原色の想像力2』読書会の時間になってしもうた。一応、全篇再読はしてきたけど、コメントはほとんど用意していないのだ。
 岡和田晃さんの司会で、さあさ始まり始まり。ほぼ打ち合わせもなく、本の掲載順にそれぞれコメントすることになって、最初に指名されたのが、一番向こうに座っている松崎有理さん。ラッキー、これで自分のところに回ってくるまで時間が掛かる。みんなのを聞きつつ考えれば楽勝だ、と余裕をこく。
 しかし松崎さんの短評が、「えっと、この小説を読んだのが地下鉄に乗っているときで・・・・」と長くなりそうだったので、気持ちがショート気味の岡和田さんが突然、私にフルのだ。おおっと、何にも準備していないもんね。
 「・・で、ですね。やっは空木さんの作品の一番いいところは彼がイケメンだってことですよ」
 おお、なんというコメント、これでバートルが低くなったどころか、地下にまで潜り込んだのだ。で、そのあとは人生いろいろ。お酒が入っていなかったので、それなりに覚えているけれど、それを書いていったら、5月いっぱい使っても終わらないだろう。だから、そのあたりは参加した人から、チラリチラリと聞いてくださいませ。
 はい、今回ももちろんレポートの体をなしていないし、もともとレポートを書くつもりもありません。ゴメンね。
 かくして本郷の夜は更けていく。その次のコマも「創元SF短編賞の部屋」ということで、マッタリとしたテンポで『盤上の夜』とか『あがり』とか、今後の展開とかが語られる。近くからはいびきが聞こえると、誰かがその人を踏みつける。そんなアットホームな感じでこの部屋は明日を向かえたのだった。
 ということで、あとひとコマを残していたけど、部屋の枕の隙間が狭過ぎるようだし、お仕事らしきものがこってり残っているし、なにより家庭平和のためにタクシーで帰ることにした。見れば、松崎さんが公衆電話で自宅に連絡中、もう終電が終わっていることを知って、ややパニック状態。
「だって、名古屋だったら、まだ電車走ってますよ」
 はい、ここは東京です。ホント恐ろしい場所なんです。で、彼女がしっかり二足歩行していることを確認してから、「タクシーで帰るから、途中で落としますよ」
 きっと、私は白馬の王子さま、というか驢馬に跨ったサンチョ・パンサに見えたに違いない。
 ということで、ペッポココンビは小浜徹也さんや酉島伝法さん、そして岡和田さんという豪華メンバーに見送られながら、SFの楽園をあとにした。
「いや、もうしわけない」と誰かがいってくれたけど、大丈夫。
「今日は軟体動物ではないので、まったく平気です」
 と、またネタにしてしまったが、本人は気づかないか、気づかないフリをしている。
 家が近づくタクシーの中で、酉島さんからもらったももんじがキューと鳴いたのは、聴覚がSFウイルスに侵されてしまったからです。