初めての文フリ03

 疲れたと童のごとくにほざくツレを休憩コーナーに放置して(あらら)、文学フリマ会場の二階をツラツラ見ていくと、知った名前の並んでいる書籍がある。タイトルは「genkai」。そうウルフが引退するときの言葉(みんな知らないと思う)じゃなくて、限界研の同人誌で、先日のSFセミナーでお世話になった岡和田晃さんを初め、海老原豊さんや藤田直哉さんといったSF評論賞の諸先輩たちが参加しているのだ。
 「あの、こちらって、SF評論賞の……」などと、ブースにいた人におずおず声を掛けると、顔を上げてくれたのが、評論賞の贈賞式でお会いした海老原さんだった。購入した「genkai vol.1」もミステリ評論が主のようだ。なるほど、彼らのフィールドは広い。二、三頁眺めてただけで、自分はまだ世界を何も知らないことに気づき、オジサンは心地いい置いてきぼり(いい意味で)の感覚を味わう。「杉作、日本の夜明けじゃ」
 いったん休憩コーナーに戻って、ツレにジュースを補給し、そしてまた歩き出す。で、また酉島さんの出店、じゃなかったブースに行くと空木春宵さんがいる。
 たしかツイッターには、黒いウサギがなんとかのドラえもんで通報しないで、とあったので、てっきりウサギの着ぐるみでも着てくるのかと思った。空木さんがドラえもん体形なら、私は風船じゃん(悲しいかな事実)。
 と、そうそう、彼の作品が掲載された書籍があれば買わねば、とブースの場所を聞いていると、大森望さんと渡邊利道さんが話をしている。もちろん高山さんや倉田さんもしっかり店番の夫婦みたいになっていて、いやいや一階入口付近は、SF的にはなんとも豪華な一角なのではあった。