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 最初に影響を受けたSF作品は、という質問を最近受けることがあったのだけれど、それには、いつも学習科学図鑑の「宇宙旅行」と「未来の世界」(ともに小学館)と答えている。まあ、正確にはSF作品じゃないけど、いいよね。
 ということで、この二冊の本の私への影響は絶大だった。でも残念ながらもう何十年も前に両方ともどこかへ行ってしまっている。子供の頃の本って、どうしてみんな消えてしまったのだろうか。
 今までも何度かアマゾンや日本の古本屋で探してみたのだけれど、なかなかヒットはしない。しかし、奇跡は数日前に起こった。日本の古本屋での検索の何度か目で、その一冊である『宇宙旅行』が見つかったのだ。しかも安価である。もちろん速攻で申し込み。
 それが本日届いた。表紙は三機のロケットが火星に到達しようとしているもの。いやはや懐かしい。奥付を見ると、昭和46年、つまり1971年で7版だが、当時持っていたのは、もう少し前の版だろう。残念ながら初版の年の記載はない。
 本を開くと、そこに広がるイラストのほとんどを覚えていたことに気づく。少なくともそれは40年前の記憶である。マーキュリーやジェミニ、そしてアポロの解説とともに、月面基地や火星探検、さらには木星土星にまで想像力は足を伸ばしている。
 さらにさまざまな推進システムが紹介される。ううう、原子力ロケット、あったよなぁ。
 たぶん1960年代の終わりに作られたこの本、その制作過程は時代との追いかけっこだったに違いない。本編では壮大な宇宙旅行の話が展開していながら、最新のアポロ11号の月着陸の話が載っている。そのバランス感覚が見事である。
 60年代末の子供たちは、月を人が歩いている写真の、次のページにあるイラストの月面基地が、そのまま実現するものと思ったものだ。
 さて、その1ページをホントにめくるのは、誰なんだろうか。