魚は枝にはなっていない。

 土曜日、公園のベンチで本を読んでいると、三人の中学生ぐらいの男の子たちが釣竿や網を持ってやって来た。この公園には大きな池があって、珍しいことに釣りをすることがオフィシャルに認められているのだ。
 どこかの看板には、その証拠に「チビッ子たちにさかなつりをかいほう」なんていう文言があったりもする。しかし釣りをしているのは、ほぼ間違いなく、定年後のオヤジたちである。彼らはまるで置物のようにそこにある。
 ということで、めずらしくも釣りをしたい「チビッ子」たちは、そういった定位置に鎮座しているオヤジたちの隙間をぬって、さまようことになる。
 私の前に現れた三人のボーヤたちも、その類いなのか、あるいはじっと座って浮きが動くのをただ待つことに何の快感を見出せていない輩なのか、ちと判断はできない。しかし中学生にしては立派な釣竿であり、また高そうな網を持っている。その先頭の一人が、まだその持ち歩き方さえ習熟していないと見えて、その針でなんと桜の枝を釣ってしまったのである。
 さても本日は大漁である。(続く)