埋め草架空対談05

 C この「ものみな憩える」の登場人物で、名前があるのは床屋の西田と青木、そして主人公のマコトぐらいです。そこでネットでも、はこの西田と青木がシンメトリーっぽい漢字なので、マコトも真という字なのではないか、といわれてましたよね。

 B はい、いろいろと語られるのはありがたいことです。でも漢字がシンメトリーであることはあとで気づいたんですよ(笑)。西田さんはホントウの床屋さんの店長で、青木も本文にあるように私の母方の姓です。

 C ということはそれも何かの仕込みなのですね。

 B そうです。あくまで構想なのですが、この青木くんにもまだ観ぬ続編で活躍してもらうことになっています。

 C そういえば、主人公が床屋を出るときに彼は、「素敵なことが起こりそうな夜ですね」なんて主人公にいってますが、どこかの映画でそんな台詞がありましたよね。

 B あははは、それはナイショにしておいてください。それからやはりネットでこの短編アンソロジーをすべて4コマ漫画にした人がいましたが、そこではこの主人公がまったくの白髪になっていたんですよね。私は部分染めのつもりで書いたんですが。

 C 若い人にとっては40歳も50歳もみんな老人で、白髪染めといったら、すべては白髪の人というイメージなんでしょうね。

 B そんなことも勉強になりました。当たり前のことですが、書き手のイメージと読み手のイメージの差は当然生じてしまいます。その差というか、隙間というか、断層というか、そんなものを逆に活用したいと思うのですが、なかなか手立ては見つかりません。

 C 文中にある言葉を少し拾ってみましょうか。若い人には「おばあさんの匂い」はかなり難しい。「石油ストーブ」も若い人が想像するものと、書き手が表現しようとしたものとは違うでしょう。このストーブは円筒形の上のドーム型の部分が燃えて、それを反射板で照らすといった仕様のものですよね。

 B その通りです。よく分かりましたね。そのことをチチッといった音やオレンジ色に染めた、で表現しようとしたんですが。

 A えっ、そのストーブって、四角くて送風装置がついていて、タンクが簡単に外せるヤツではないのですが。

 C 自分だけ若ぶってもダメですよ。