梅雨の一呼吸

 五反田の寺で、亡父の一周忌を営む。
 365日という日々の短さを感じる。梅雨の一休みのような天気だった。ただし陽射しは強い。光の中で墓石の水が元気よく跳ねた。
 陰膳には若い頃の母といっしょに写真を具える。なんと父が25歳、母が20歳ぐらいのはずだ。もしかするともっと若いかもしれない。まあ母あっての父だったからいいだろう。母は間違いなく嫌がるだろうけれど。
 列席した孫たちも、すでにその年齢を超えようとしている。
 先日、ブログでも書いた、かつての釣り船の発着地らしい場所が、テレビで紹介されていた。この五反田ともそう遠くない。東京湾へと漕ぎ出して、そこで釣った魚を船の上で天麩羅して食べた、あの釣り船である。
 そのときの天麩羅の匂いが記憶に残っていることはすでに書いた。やはり陽射しの強い日で、脳裏にある風景は光に満ちている。その釣り船に乗り合わせた人のほとんどは、すでにこの世の人ではないだろう。
 今度、そのあたりを散策してみることをしよう。はたしてそれが供養によるかどうかはわからないが。