散歩あゆめず05

　すでに書いたことだけど、３０年ほど前にも、この代々木公園が人々の波で覆いつくされたことがあった。
　その頃、まずヨーロッパで反核運動がさかんになった。アメリカ合衆国はパーシング?という長距離核ミサイルをヨーロッパに配備しようとしたが、そのことで東西の軍事バランスが崩れ、核戦争の舞台になることへの危惧が発端だったと記憶している。
　やがてそのうねりが日本にも広がって、数多くの集りが開催された。この代々木公園で行われた集会はその集大成のようなものだった。８ミリフィルムに残されているはずの映像には、その日、このサッカー場を埋め尽くした人々を、グルリと一周映し出した場面があるはずだ。
　その日は、たしか３０万人とも５０万人が集ったはずである。それらは「反核集会」と総称され、基本的には核兵器に対する運動だった。原発が核兵器につながる事象であるという認識は少数派のものであったに違いない。
　そのときの会場は、今回よりも広く、サッカー場や代々木公園の原宿寄り入り口、そして代々木競技場の前の広場というように、そこに集る人々の「ゆえん」によって分散されていて、何にも依らない人は市民団体や市民個人のための競技場前に集った。
　集会のあとのデモも、あまりにも人数が多いことが予想されたのか、それともそういった発想はなかったためなのか、行われることはなかった。ただ解散してから渋谷駅へと向かう人の群れが自然発生的に公園通りを埋め尽くしたという。ただ某氏は、不覚にも原宿から新宿へとサッサと酒を飲みに行ったので、それを目撃することはなかった。