散歩あゆめず09

 人の流れに身を任せて、大きな横断陸橋の下まで到着。さっそく影の隙間に身体を入れる。ああ涼しい、と思いつつ、炎天下のメイン会場の人たちに御免なさいと、カバンの中の2本目のアクエリアスを開ける。面白いぐらい大量にそれが喉を通過する。
 そしてあたりをウロウロ。どこかの団体が威勢よく展開していた会場カンパに応じて、制服向上委員会の女の子からビラを受け取って、焼きそばを食べている家族をうらやましげに眺め、家と友人に電話を入れるがやはり通じず、そうこうしているとメールが届く。友人もどうやらどこかにいるようだ。
 そしてメイン会場の呼びかけももうすぐ終わりそうだと思ったら、どうやら予定にない女性がステージに飛び入りしたようだ。
 もちろんここからそこは見えない。ただ声が聞こえるだけだ。
 私はノンポリです、とまず彼女はいっている。やや甲高い声だ。津波の悲惨さを訴える。それはそれでいいのだけれど、ここは「さよなら原発」という集会だ。しかし主催者は進行が遅れているはずなのに、彼女にしゃべらせている。寛大である。
 そして話が唐突に変わって、彼女は枝野大臣を知っているという。確かにここにいる人はほぼ全員が彼のことを「知っている」。そして彼女はいう。あの人は悪くない、とてもいい人だ、と話は続く、が突然マイクの電源がオフになった。何があったかはここからはまったくわからない。
 少し間があって、福井や福島から来た人たちが静かに語り始めた。
 うーむ、いろんな人がいる。なにせ17万人なのだから。