ソラリスのストーカー07

 すでに最初のあたりで書いたことを繰り返すと、今回のタルコフスキー映画祭で上映される「惑星ソラリス」の字幕は、DVDの字幕ではなく、日本公開時のものである、と配給会社の方から説明を受けた。つまりテレビ放映を別にすると、その言い回しに私は数十年ぶりに再会するのである。しかしやはり違和感があった。
 たとえばクリスが最初のハリーをロケットで打ち上げたあと、スナウトと話をするシーンでスナウトがクリスに、「ルターのようにインク瓶でも投げたのかい」というような意味のことをいう場面があるのだが、今回の字幕はそれがすっぽりと抜けているようだった。
 これは隠れ住んだ城の中で、ルターが悪魔と対面し、その際にインク瓶を投げつけたという逸話を表現したと考えられる。
 実際、この台詞は後半部分でインク瓶の栓が転がる音とともに、クリスの母親が登場する場面に生きてくる。そのスナウトの台詞が今回の字幕にはないのだ。
 また地上のシーンでの父親とクリスとの会話では、クリスはしばらく地球に帰ってこないというニュアンスなのだが、DVDでは永久の別れという度合いが大きい。
 こういった違いはありながら、逆に公開時の受け取り方を知る上でも貴重な映画祭であるといえるだろう。
 私は「ストーカー」を観にいくつもりだ。