電気炊飯器と電気掃除機02

 たぶんそのおばあさんは、数十年前の自分に戻っていたのではないだろうか。
 そしてその頃、例えばどこかの家に奉公に出ていて、例えばその家の炊事や掃除を任されて、例えば、その家が、山の上の加藤さんだったのではあるまいか。
 で、どういうわけか、とても便利な炊飯器と掃除機を見つけた。こんな便利な機械があればどんなにステキな生活になるだろう、いやそれよりもなによりも奉公先にとっていいことに違いない。そんなことを思って、現在の機械を両手に抱えて、数十年前の記憶のままに、おばあさんは山の上の加藤さんの家を目指したのではないか、と考えたのである。
 まあ、最近のテレビドラマにも、あるいはドキュメンタリーにも再三取り上げられているような、そんな出来事のひとつだろう。
 でも二つの家電といっしょにハタキも持っていたというのは、妙にリアルではある。