ソラリスのストーカー補遺04

 映画が始まると、たっぷりと水分を含んだような板張りの床の食堂が映し出される。給仕らしい男が登場して、照明を点けるが、一方の蛍光灯は点滅を繰り返すだけだ。
 そしてその時代のSF的な雰囲気そのままの黄色いタイポグラフィが、タイトルやなにやらを表示していく。
 たまたま手を伸ばして届くところに昔の写植見本帳があったので、この書体を探してみたが見つからない。もちろんここにはモンセンなんてものはない。しかしこの書体、あの「惑星ソラリス」のそれが静謐な感じなのに比べると、ずいぶんと世俗的というか、一般的ではある。
 今回の上映は、デジタルリマスター版ということで、細部を注視しようと意気込んで画面に相対した。しかし、とりあえずオープニングやボンヤリとしている。
 一瞬、自分の老眼のせいかとも思ったが、このくらい離れていればボケる(目のことです)ことはないはずで、その証拠にタイトル系の輪郭ははっきりとしている。よってこのボンヤリは、もともとの素材に原因しているようだ。
 でもそんな感覚は最初だけで、数分ほどすると、「ストーカー」の世界に引き込まれていく。
 ストーカーの寝室はまるでダ・ヴィンチの素描をさらに荒くしたようではないか。おっと、あの作家のあの帽子、どこかで見たことがあるぞ。ストーカーの妻の演技と持っているものも、アレに出ていたのと似ているな、などと妄想は広がる。
 やはりタルコフスキーの映画は、暗闇の中で絶対に静止ボタンなぞ押さずに観るべきモノなのだ。
 今回の鑑賞でいろいろと再確認や発見したと思われるものが多多あるので、ここでそれをツツ書いていこうかとも思ったのだけれど、それにはやはりいちいちいろいろと検証もしなくてはいけないようなので、もうしわけないけど、それは他日のこととしたい。いつかどこかで、それが紙にしるされたインクであればいいのだけれど。