音の映像

 この前、映画「頭上の脅威」について書いたけど、40年以上前にテレビで放映したときには、その音を録音していたのだった。
 もちろん当時は家庭用のビデオなど影も形もないし、ラインでテレビの音を録る方法を中学生が知る由もない。だから、マイクをテレビのスピーカーの前に置いての録音だった。よって家事の音や家族の声もその中に紛れ込む。
 どうしてそれを残したかったのは明瞭ではない。ただそのテーマ曲がとてもいいとクラスの仲間内で話題になったのだと思う。つもり再放送を録音したことになるのだが、そのあたりもまた茫漠としている。
 テレビ放映なので台詞は日本語の吹き替えだった。だかに音だけでも筋が追える。私はその録音をラジオドラマのように繰り返して聴いたのだろう。その最後のナレーションまでも、そのおおよそを憶えている。
 何度か聴いたのだから、あたり前ともいえるけれど、映像として現前するのではなく、音声だけで想像力をたくましくする。そのたくましくさせたが故に、この映画はもしかすると思い出の映画となったのかもしれない。(来年に続く)