一日遅れの雪

 深夜の雨はいつのまにか雪に変わったらしい。昨日は昼間から酒を飲んだせいで、夕方にひと眠りした。そのせいで深夜ちゃんと眠ろうとしても、なかなか寝付けない。ただ窓の向こうの雨音を聴きながら、いつの間にか意識も闇に包まれていた。
 そして遅い朝、少し冷たい空気の中、ツレの喜びを含む声に起こされる。
 「雪が積もっているわよ」
 確かに天気予報もそういっていた。しかしこれほどまで積もるとは。
 二十六年と一日前も今日と同じような雪の朝だった。
 1987年の1月13日の朝、一本の電話が祖母の死を知らせた。それは突然の死だった。父はすぐに身支度を整え出掛けていく。
 あれから四半世紀と少し、少なくない人たちが時間の向こう側に行ってしまった。
 祖母の二十七回忌の集まりは、ちょうど命日に重なった。数日前の天気予報では、日曜日の天候がかなり荒れるといっていたが、幸いにも晴天でかつ暖かい日。墓前の花に冬の光が似合っていた。
 孫が三人と娘が一人、こじんまりとした法事なので寺では食事をせずに街のレストランへと繰り出す。そのほうが昔話もしやすい。
 窓からは遠くまで見えた。
 祖母の名前は雪だった。彼女が亡くなったその日に雪が降った。そしてまた13日に降るはずだった雪が、一日後にやってきた。もしかするとそれは祖母の仕業なのかもしれない。