切手を買う少年の顔

 小説『海炭市叙景』のことを調べたくてネット検索したら、ズラリと並ぶのは映画の方ばかり。映像メディアの力の強さというか、文字メディアの弱さというべきか。
 映画を観たことが小説を読むきっかけになればとも思う。だけどやはり映像の印象ってとても強くて、どんな作品でもそうだけれど、あとで小説を読むときには必然的に頭に浮かぶのはその映画俳優ということになる。
 ということで、そのDVDをなかなか買おうとしないのは、たぶん自分の頭の中に住んでいる海炭市の人々を、どこかに移住はさせたくないからなんだろう。たとえば映画に登場しているかどうかもわからないが、切手を買いに行く少年は頭の中のぼんやりとした顔のままでいてほしい気がする。
 ちなみにすでにここでも触れたことがあるはずだけど、その少年のエピソードには、あの映画『ミツバチのささやき』が登場する。
 で、ふといま思ったのはまったく別の話になるが、佐藤泰志さんの作品に出てくる映画や音楽のリストを作ったらおもしろいかも、ということ。あっ、もうどこかで誰かが書いているかもしれないな。