チラシで花を咲かせましょう。

 しかしどうにかこうにかエレベーターを降りて、森美術館の入り口らしいところにたどり着いた。
 ホールの天井からは巨大な赤提灯が垂れ下がっている。これも会田作品でタイトルは「心」。居酒屋へ入る気分で、といったところかな。それをかすめつつエスカレーターを上がると、やっと会田誠ワールドに到着なのだった。
 カウンターでは音声解説が聴けるレコーダーを無料貸し出し中。でもチトめんどくさいと思って手を出さなかった。
 よって、以下ほぼ何の説明も聴かず、ほぼ予備知識もない状態でのいくつかの会田作品の感想文(のようなもの)となる。あくまで個人的意見なのでありまして、決して信用しないように。
 まずは「切腹女子高生」に度肝を抜かれる。格子状のホログラムフィルムが英文タイトルと署名とあいまって電脳空間的な感覚を醸し出すが、描かれているのは何人もの少女のいわば古典的な腹切り現場。その印象の乖離に躊躇する。中央の少女だけが無傷なのは介錯役なのか、などといった解釈(おやじギャグではありません)は必要ないよね。意外とあっけらかんと観ているツレは、自分の首を切っている少女をさして、「ああは切れないよね。それに腹切りじゃないし……」。まあ感想にもいろいろとある。
 「鶯谷図」は、かつて東京の公衆電話ボックスには必ずといっていいほどくくりつけられていたピンクチラシを散りばめて、日本画風の花の満ちた樹木を描いている。タイトルが鶯谷なんだから、この木はとうぜん梅なんだろうね。もちろん鶯谷という猥雑的な地域色(すみません住民の皆さん)も重ねているはず。どこからかスキャンした写真と、熟女とか若妻とか女子大生とかの文字が細かい陰影をつける。
 ととと、これじゃまだ入って5メートルも進んでいないじゃん。