いまだ息づく廃墟へのつぶやき

その会田作品は「モニュメント・フォー・ナッシングⅣ」というタイトルが付けられている。同じタイトルの作品群があるが、これはその最新作で、展示する場で「作る」ということ以外にこれといったコンセプトの類似は一見したところない、などとエラソーに書いても、読んだ人にはまたまたなんのこっちゃには違いない。とにかく以下その作品の見た目を書いてみることにする。
 会場の白い壁がそのまま台形の作品になっているようにも見える。図録によると作品自体の大きさは570センチ×750センチだという。その台形の上底は下底の八割ほどの長さだが、直線ではなくギザギザに千切れている。まるで何かの強い力ではぎ取られたようで、そのエッジ部分は黄土色である。
 台形の表面はその多くが水色に塗られているが、左上部に行くに従って、小さな雲か、あるいは流氷を俯瞰したような模様が数十漂っていて、その一つ一つの周囲の水色はやや濃くなっている。その壁のところどころには、まるで汚れのように色とりどりの小さな四角とさらに小さな点が並んでいる。
 この台形を見上げると、それが何を描いたものか瞬時には気づかない。結局気づかないままに、前を過ぎる人もいるかもしれない。
 その巨大な台形を見上げたあとで、そのままその一部分、どこでもいい一部分を見つめると、その壁の汚れに見えたモノは、実はツイッターの画面のプリントアウトであることに気づく。文面はすべて東京電力福島第一原発事故へのつぶやきだ。
 この細部をきっかけに人はこの全体がなんであるかを知る。これは上部が吹き飛ばされた原子力建屋だった(スミマセン、私はその水色と白色の模様だけで気づきましたが)のである。
 この部分と全体の連関の中て描かれたモノを知ること刹那、パチンと頭の中で鳴る音がある。それはさて快感なのか、苦悩なのか、それとも。