臨時パイロットの憂愁

 結局のところ、会田誠展でいちばん印象に残った作品は「イマジン」だったのかもしれない。
 白い紙にはかなりゆがんだ四角が四つ。その手前に開いた一辺を下にしたコという字のようなカタチがふたつ、その右側にだけ人型の上半身。
 つまりコのカタチは椅子で、その右に人が座っているように見える。その姿はシルエットになっている。そう、つまりゆがんだ四角は窓であって、その人はそこからの光を浴びているようにその周辺が白く輝いている。そして窓の向こうには、中央の柱に隠れて、やはり底辺を欠いた縦に長い長方形、その右にもやや低い長方形。
 ここまで確認すれば、何の絵であるのかがわかる。ここは旅客機のコクピットなのだ。さらに窓の外に見える長方形はWTCに間違いない。そこに行き先を定めたシルエットの臨時パイロットの後ろ姿が、なぜか寂しく見える。
 そしてこの絵の上の方にはIMAGINE、とある。写真は本文とは関係ありません。