ボイスレコーダーの怪

 ボイスレコーダーを再生していて、ひと段落後。でももう全部終わったな、と思ったら、なぜかファイルがもうひとつある。
 で聴いてみると、ほかの音よりも妙にリアルに、ザクザクザクと玉砂利か何かを踏んでいくような音、そしてそれが止むと今度はコロコロコロと水音か、あるいは金属またはガラスが何かにぶつかるような音、そしてまたザクザクザク、コロコロコロが何度も繰り返される。さらにときたま息遣いが入る。
 エエエッ、これはいったいなんだろう。
 深夜のお百度参りか、それとも子どもの亡霊が古井戸に水を何度も汲みにいっているのか、それにしてもこんな音が入っているということ自体が不思議なのである。
 その理由を知りたくて、レコーダーを早送りするも、ずいぶんと先までザクザクとコロコロが続いていて、それに何かを早く敲く音が連続して混じるようになった。うーむ、これはいったい、と考え込んだそのときに聴こえてきたのは自分の声。
 「やっぱりロバート・キャパというのは、彼一人じゃなくて、彼女といっしょの名前なんじゃないのかな」
 私は柿ピーをむさぼりつつ、バーボンのロックを長々と飲んでいたのだった。つまり聴こえていたのは柿ピーを食べる音とバーボンの氷とグラスがぶつかる音だったわけ。それが何かの間違えて録音されていたという、なんともオソマツなな結末。しかしまあ、わかってホッとした。キャパよありがとう。

 はい、つまりあの沢木さんの番組を観た深夜の出来事でした。