壇上の夜03

 というわけで、その青年とともに「徳間文芸賞贈賞式&祝賀の宴」の受付に向かう。と隣に勝山海百合さんを発見。
「あー、忍澤さんだ。ありがとう、選んでくれて」と彼女からあの微笑みをいただく。一瞬なんのことかわからなかったけど、そう「SFが読みたい」の私のベスト5で、彼女の『さざなみの国』を挙げたことのお礼なのだね。いえいえこちらこありがとうです。
 そして案内状を出して、えっ記帳か……、ううむ、ここは筆書きなのだ。と、最初から悪筆をさらしてしまった。
 さて、気を取り直して会場へ。入り口付近には徳間書店の方々なのか、小ざっぱりとした感じの方々の出迎えを受けるすなにやらこんな私にまでスミマセンという気分。
 会場のローズルームは学校の体育館ほどの広さ。入るところで飲み物を受け取る。青年はウーロン茶に手を出していたので、
「飲めるんでしょ」というと、彼はしっかり「ビール」のグラスに手を出した。そして二人はズンズンと前に進む。すると選考委員の席に宮部みゆきさんが顔が見えた。これで青年の目的はほぼ達成されたといっていい。なんてったってナマ宮部さんなのだ。宮部さんといっしょの空気を吸っているのだぞ青年。彼の顔はちと早すぎるこの世の春を迎えていた。しかし青年の幸運はさらに続くのである。
 大藪春彦賞の受賞者は柚月裕子さん。ちょっと広末に似てる。声もとてもチャーミングだった。青年にそういうと、「意外とミーハーなんですね」と。まあ間違いではないが、今日のミーハーはキミではないか、わざわざ会社休んで来たんだし。しかし柚月さん、 そして式次は日本SF大賞へと移る。でその講評を述べるために演壇に立ったのが宮部さんなのである。青年の興奮はさらに高まったに違いない。