壇上の夜06

 ということで、会場でいろいろと貪りつつ、いろいろな人にご挨拶。
 宮野さんに会ったとき、「ここのオムレツ、おいしいんですよ」と誘われたので、その前にできていた行列に並ぶ。昨年もこんな列ができていて、いったいなんだろ、と思っていたが、コックさんがその場で調理していたのだね。
 しかし考えてみると、私は食べ物を求めて行列に並ぶことはほとんどなかったので、ある意味これは貴重な体験。並ばないのはけっしてええカッコしいなのではなく、ただ単にすぐに食べたいからなのだ。
 例えば、池袋のジュンク堂近くのラーメン屋はいつも行列なので、関心の外、でも一度誰も並んでない時があり、腹も減っていたので店に入ってみた。で、お安くはないその値段にやや驚きつつ、それを食してみたのだが……。
 行列の中で、さっそく宮野さんと前に並んでいる女性がおしゃべりを始める。
 一般化してはいけないが、やはり女性同士というのは親しくなりやすいようで、ツレなどもウチのマンションのエレベーターが降りていく数秒内に、知らない女性とお友達っぽくなっている。
 「お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に」である。男は周囲は危険と敵ばかりの遠くて不特定な場所に出掛けるが、女は安全でお知り合いばかり近くて特定の場所に出掛ける。まあそういった概念が妥当であるとは思わないけど、と一応書いておく。
 さて、気になるそのくだんのオムレツのお味は……。
 閑話休題。そうして腹もくちた頃、その宴はそろそろお開き、あの青年もやってきて、今日のこの時間を楽しんだご様子。よかった、よかった。その帰りにも彼からお礼のメールがさらにあった。ご両親、いい子に育てましたな。
 これからは日本SF大賞関係の二次会である。増田まもるさんや岡和田さんたち何人かとつるんで、東京會舘から出ようとすると、あいにくの土砂降り雨、タクシーで会場に向かうことにする。壇上の夜はなかなか終わらない。