壇上の夜10

 あれれれ、下書き保存した文章が消えている、って、自分がしでかしたヘマなのだけど、わずかに凹みつつも壇上の夜は続く。
 ということで、理事長と副理事長の見事なあいさつに、観衆の期待と興奮はさらに高まり、そのハードルは天井に着きそうである。そんな会場の雰囲気のままに、宮内さんの最初の登壇となる。
 まずは正賞の記念リング「メビウスの帯」と副賞、それに花束が贈られる。そして壇上は講演会のためにしばしお色直し。どっこいしょと演台が運ばれてきて、また宮内さんの登壇再び。演題は「街場(ストリート)ではなく、路地でもなく」とある。
 まずは宮内さん安堵の一言、演壇があるので、見えないように原稿を置くことができる、とのこと。話す時間は二十分ぐらいを予定していますが、もっと短くなるかもしれないし、もっと長くなるかも、と。
 結局三十分ほど続くその講演会は、そもそも書くとはどういうことなのか、そして表現することの困難性とそれ以上の至福性、さらに用具としての言語や書くべき場などについて、さまざまな作家の言葉の解釈や自身の思弁的な発想がめくるめく迸る空間となった(個人的感想です)のだった。
 その圧倒的ともいっていい深さは、逆に天井まで上っていたハードルを簡単に飛び越えて、たぶん出版会館の屋根をぶち破っていたに違いない。書き手という者は、これほどまでに思いを巡らして言葉を紡いでいるのかと、感慨しきりのわたくし、なのではあった。ということで、ほぼ端折ってごめんなさい。こういったことは著作権の問題もあからると思われるからね。
 実際の内容はとある媒体で発表される予定とのことなので、お楽しみに。