胸の中のドラムロール

 SF短編賞の選考会も、残りの作品が数点になってくると、実際には流れていないドラムロールが、参加者の心臓によって、高らかに打ち鳴らされているのではないか、という否が応でも緊迫した状況。
 今回の最終選考に残ったもう一人の知り合いである高槻真樹さんは、結局17人目、つまり最後の人の一人前となったのだった。これはもう拍手パチパチでいいでしょう。作品名は「狂恋の女師匠」。それだけだと、なんか昭和初期の小説か映画のタイトルだなぁ、と思っていたら、実際にも溝口健二が戦前に撮った作品なのではありました。
 恥ずかしながら、この映画をまったく知らなかったのだけど、手元の『映画監督 溝口健之』四方田犬彦編著を見てみたら、しっかりチラリと出てました。小説はこの幻の映画を探すことで起こる密室殺人……とか。
 そして最後に読み上げられたのは宮西健礼さんで、作品は「銀河風帆走」。はい、パチパチパチ。
 ここまでが、いわば成績発表と講評の時間。しかし問題は最終的にどの作品を正賞にするかということ、そして優秀作と選考委員の各賞があるのかどうかということ。
 その論議に入るまでしばしの休憩となる。そうインフォメーションされたとたんに、会場のそこかしこから、プシューと空気が漏れる音が聴こえたとか、聴こえなかったとか。