夕陽の曠野

 というわけで、最終選考会のエアロック、じゃなくて幕は閉じられる。あとには死屍累々たる……曠野があるばかり、と、そのあとで、小浜さんが、どなたか応募された方で、会場にいらしている方はいらっしゃいますか、という意味のことをいったら、そこここから手とか声とかがあがる。
 第一選考に三作、最終候補にも二作が残った期待の新人、宇部詠一さん、アメコミなりきりヒーローを描いた鹿島さん、そして正賞を射止めた宮西さんが会場にいらしたのだった。ううう、みんな若い。
 さっそく小浜さんと宮西さんは改稿のスケジュールの公開打ち合わせ、っていいのかなぁ。まあ、おもしろいけど。
 彼らは、たむろしていたかつての短編賞の関係者と交じりあって、いろいろと話す。宮西さんは京都大学農学部に在学中で寮住まいで、おかずにするために、羊とか牛とかを飼っているとか。鹿島さんはアメコミだけでなく、なななんと『白鯨』とか『ドン・キホーテ』も好きだとのこと。たしかに当日配られたレジュメによると、ド・キホーテの体裁を強く感じさせるのだが、この二作とは「ソラリス」解読の二大ツールではないか、とオジサンはその件を伝えたが、鹿島さんはほぼ?という感じで、武蔵浦和の夕陽は落ちていくのであった。